背景
Autodesk は建設・設計業界のデジタル変革において、設計と施工のワークフロー分断が長年の課題として存在してきました。従来、設計段階では Revit などの BIM ツールが中心となり、施工段階では別のプロジェクト管理プラットフォームが運用されることで、データの断裂やコミュニケーションロスが発生していました。Autodesk Construction Cloud は、施工・現場運用に特化したクラウドプラットフォームとして 2020 年代初頭から展開されてきましたが、依然として設計との連携面で限界がありました。こうした背景から Autodesk は 2025 年の Autodesk University で「Forma」という新たなエンドツーエンド、クラウドネイティブ、AI 対応プラットフォームのビジョンを発表。設計・施工・運用のすべてを統合する戦略を打ち出しました。
内容
2026 年 3 月 24 日、Autodesk Construction Cloud は Autodesk Forma に統合されます。この統合により、製品名が段階的に変更されます。具体的には Autodesk Docs は「Forma Data Management」に、Autodesk BIM Collaborate Pro は「Forma Design Collaboration」に、Autodesk Build は「Forma Build」に、Autodesk Takeoff は「Forma Takeoff」に改称されます。Forma Data Management が共通データ環境(Common Data Environment)として機能し、計画・設計から施工、運用に至るまでのデータ連携を統一します。重要な点は、これはブランド・プラットフォームの進化であり、顧客への大規模な混乱ではないということです。既存の API、インテグレーション、ライセンス体系、ログイン体験、顧客データはすべてそのまま維持されます。データマイグレーションも不要です。
技術的ポイント
Forma Data Management の導入により、AECO(Architecture, Engineering, Construction, Operations)プロジェクトライフサイクル全体を通じた一元的なデータ管理が可能になります。従来の設計 BIM モデルと施工現場データの分断を解消し、設計意図から施工実行までのトレーサビリティが向上します。Autodesk Platform Services および共有データ基盤の上に構築されており、AI ネイティブなアーキテクチャを採用することで、設計最適化から施工スケジューリング、変更管理まで AI による支援が可能になります。既存の Revit との連携も維持されるため、BIM モデルの更新が自動的に施工情報と同期される仕組みが期待できます。ただし具体的な同期メカニズムの詳細仕様は別途開示される見通しです。
業界への影響
この統合は、グローバル AEC 業界全体に大きな波紋をもたらすと予想されます。特に大手ゼネコンやプロジェクトデリバリー企業にとって、複数プラットフォームの運用コスト削減につながります。従来は設計メンバーと施工メンバーが異なるクラウドツールを使用していたため、ミーティングやレビュー時にデータを複数プラットフォーム間で同期させる手間がありました。Forma への統合により、プロジェクトチーム全体が単一のクラウド環境で協働できるようになり、意思決定の迅速化が実現されます。また、BIM Collaborate Pro の名称を「Forma Design Collaboration」に変更することで、設計段階からの施工連携を戦略的にアピールします。クラウドベースの共通データ環境は ISO 19650(BIM データ管理標準)や BS 1192 の国際基準にも適合する形で設計されており、コンプライアンス観点からも信頼性が高まります。