背景

2022年のロシアによる侵攻以降、ウクライナの都市インフラは深刻な被害を受けており、戦後復興は長期的かつ複雑なプロジェクトとなっています。世界銀行の報告によれば、復興には物理的な建設にとどまらず、レジリエント(強靭性)を備えた都市計画が求められています。同様に、2019年のノートルダム大聖堂火災やロサンゼルス山火事といった大規模災害の復興事例から、デジタルツールを活用した利害関係者間の協調が不可欠であることが明らかになっています。こうした背景の下、ドイツ・マーシャル基金(GMF)が中心となってウクライナ都市パートナーシップ(UCP)が組織されました。

内容

オートデスクは2026年6月、ウクライナ都市パートナーシップの主要技術パートナーとして参画することを発表しました。本イニシアティブは、ウクライナの小〜中規模都市の持続可能で包括的な復興を支援する、セクター横断的なプラットナーシップです。オートデスクが提供する主な支援領域は、(1)都市計画・開発、(2)エンジニアリング・インフラ、(3)デジタル能力構築の3つです。パイロット都市はキーウ北西部のコロステンで、設計・可視化・シミュレーション、インフラ計画の調整にオートデスクのプラットフォーム(RevitやAECコレクション等)を活用する予定です。パートナーにはAECOM、BDP、DELTA、ドイツ・マーシャル基金、現地の自治体指導者らが含まれます。

技術的ポイント

ウクライナの復興においてBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ベースのアプローチが採用される点は、東欧地域での本格的なBIM導入事例として重要です。オートデスクのソリューションは、複数のステークホルダー間でリアルタイムにモデルとデータを共有でき、計画段階から設計・施工段階にかけて一貫した情報管理が実現します。また、シミュレーション機能により、異なる復興シナリオ(例:グリーンインフラの統合、公共交通ネットワークの最適化等)を視覚的に評価でき、意思決定の迅速化が見込めます。ノートルダム大聖堂の修復支援経験から、複雑な既存構造物のドキュメンテーションとBIMモデル化の知見も活かされるでしょう。

業界への影響

グローバルなAEC業界において、紛争後・災害後の大規模復興プロジェクトへのBIM適用が一つのベストプラクティスとして定着する可能性があります。オートデスクのような大手ソフトウェアベンダーが復興支援に参画することで、開発途上国・新興国のデジタル基盤整備が加速し、デジタルディバイド解消への道筋が示されます。同時に、復興事業の透明性・アカウンタビリティが向上し、国際開発援助における技術活用の新しいモデルが提示されることになります。