BIM/CIMは、国土交通省がインフラの調査・設計から維持管理まで3次元データでつなぐために進めている、国の取り組みです。
BIM/CIMは「Building / Construction Information Modeling, Management」の略で、橋梁・トンネル・河川・道路といった土木構造物を中心に、調査・設計段階から3次元モデルを導入し、施工・維持管理まで一貫して情報を活用しようとする国土交通省の取り組みです。もともと土木分野では2012年に「CIM(Construction Information Modeling)」として始まりましたが、2018年に建築分野の「BIM」と概念を整理・統合し、現在の「BIM/CIM」という呼称になりました。重要なのは、BIM/CIMが単なる3次元設計ではなく、フロントローディング(設計初期に検討を前倒しして手戻りを減らす考え方)と、i-Constructionに代表される建設生産性向上策の一部として位置づけられている点です。発注者である国が主導しているため、民間ソフトの選択というより「公共事業の進め方そのもの」に関わる枠組みだと捉えると理解しやすくなります。
特徴
- 橋梁・トンネル・道路・河川などのインフラ構造物を、属性付きの3次元モデルとして調査・設計段階から構築する
- 設計の可視化・干渉確認・数量算出を前倒しで行い、フロントローディングによって後工程の手戻りを減らす
- 施工・維持管理まで同じモデルと属性情報を引き継ぎ、点検・補修を含むライフサイクル全体でデータを再利用する
- 国土交通省が「BIM/CIM活用ガイドライン」や成果品の標準を整備し、発注者として活用を主導している
他との違い
- BIM(建築)が建物のデータベース運用を指すのに対し、CIM(土木)は橋やトンネルなど土木構造物を対象とし、地形・地質・既設インフラといった広域の現況データと組み合わせる点に特徴があります。BIM/CIMはこの両者を統合的に扱う呼称です。
- BIM/CIMは民間が任意で導入するBIMと異なり、発注者である国が「原則適用」という形で活用を求めている点が決定的に違います。つまり対象事業では、受注者側に3次元モデルでの成果提出が求められます。
- i-ConstructionがICT施工・データ活用による生産性向上の全体施策であるのに対し、BIM/CIMはその中で「3次元モデルを軸に情報をつなぐ」部分を担う関係にあります。
向いている人
- 国土交通省直轄事業や公共インフラ案件に関わる建設コンサルタント・施工会社
- CIMからBIM/CIMへの名称・運用変更を整理したい土木技術者
- 原則適用の対象範囲や成果品要件を把握したい発注者対応の担当者
- 建築BIMと土木BIM/CIMの違いを理解したうえで社内体制を整えたいDX推進担当
実務での使われ方
- 調査・設計では、地形・地質モデルと構造物モデルを組み合わせ、設計の妥当性検討や関係者協議に3次元モデルを用います。
- 施工段階では、設計モデルを基に施工計画・出来形管理・ICT施工へ展開し、現場と設計の整合を保ちます。
- 維持管理段階では、構造物の属性や点検・補修履歴をモデルに紐づけ、長期的なインフラ管理の基盤として活用します。
- 発注図書・成果品としては、国土交通省が定める要領・ガイドラインに沿ったモデルと属性情報を整備・提出します。
学習の難しさ
BIM/CIMの難しさは3次元モデリングの操作よりも、「発注者要件に沿った属性・成果品をどう整えるか」という標準対応の部分にあります。国土交通省のガイドラインや要領は改定が続いており、対象事業・求められる活用内容も段階的に拡大しています。そのため、最新の適用範囲と成果品要件を都度確認し、社内のデータ作成ルールを発注者基準に合わせて運用する体制づくりが要になります。
つまずくポイント
- 「CIM」と「BIM/CIM」を別物と誤解しやすいが、CIMを土木分野で発展・統合したものがBIM/CIMという連続した経緯がある
- 原則適用の対象や求められる活用レベルは事業種別・年度で異なるため、一律のルールと思い込むと成果品要件を外しやすい
- 3次元モデルは作れても、発注者が求める属性情報や成果品の形式が整っていないと評価につながりにくい
- 建築BIMの知識をそのまま土木へ当てはめると、地形・地質・広域インフラ特有の要件を見落としやすい
学習方法
まず「CIM→BIM/CIM」という経緯と、i-Construction・フロントローディングとの関係という全体像を押さえ、次に自分が関わる事業種別での原則適用範囲と成果品要件を確認するのが効率的です。そのうえで、3次元モデリングの操作と属性整備の練習に進む順番だと、発注者基準に沿った実務に結びつけやすくなります。
BIM(建築)とCIM(土木)の違い
BIM/CIMは両者を統合した呼称ですが、もともとの対象と着眼点には違いがあります。
| 観点 | BIM(建築) | CIM(土木) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 建物(意匠・構造・設備) | 橋梁・トンネル・道路・河川などのインフラ構造物 |
| 重視する現況データ | 敷地・周辺建物 | 地形・地質・既設インフラなど広域の現況 |
| 主な推進主体 | 民間・建築BIM推進会議など | 国土交通省(発注者として主導) |
| 導入の性格 | 組織が任意で導入・標準化 | 対象事業で原則適用が求められる |
CIMからBIM/CIMへ:名称が変わった経緯
土木分野では2012年に「CIM」という呼称で3次元モデル活用の取り組みが始まりました。その後、建築分野で先行していた「BIM」と概念や用語を整理する必要が高まり、2018年に国土交通省は両者を統合して「BIM/CIM」という呼称に改めました。これは単なる名称変更ではなく、建築と土木で別々に進んでいた3次元データ活用を、共通の考え方のもとで束ねる狙いがあります。現在「CIM」と書かれていても、文脈上はBIM/CIMと同じ枠組みを指していることが多い点に注意すると、過去資料と最新方針を混同せずに読めます。
原則適用とは何を意味するか
国土交通省は2023年度(令和5年度)から、直轄事業を中心にBIM/CIMの「原則適用」を進めています。原則適用とは、対象となる事業では3次元モデルの活用を前提として進めるという方針で、受注者側には発注者が定める要領・ガイドラインに沿ったモデルや属性情報の整備・提出が求められます。対象や求められる活用内容は事業種別・規模・年度によって段階的に広がっており、すべての公共工事に一律で同じ水準が課されるわけではありません。実務では、自分が関わる事業がどの適用区分に当たるか、どの成果品が必要かを発注図書で確認することが出発点になります。
i-Construction・建設DXの中での位置づけ
BIM/CIMは単独の施策ではなく、ICT施工やデータ活用で建設現場の生産性を高めるi-Construction、そしてより広い建設DXの中に位置づけられています。3次元モデルを設計・施工・維持管理で共有することは、ICT建機の自動制御、出来形の電子的管理、インフラの長期的な維持管理データの蓄積といった他施策の土台にもなります。つまりBIM/CIMは「3次元で図面を作る話」ではなく、インフラ情報をデータとしてつなぎ、再利用していくための基盤づくりと捉えるのが本質です。