背景
Graphisoftは、BIM設計ソフトArchicadの周辺ツール群を統合・連携する戦略を進めてきました。モバイル版やデスクトップ版のBIMxで先行導入してきたPro機能が、ついにWeb版(BIMx Model TransferおよびBIMcloud経由)にも拡大されることになりました。これまでプラットフォーム間で機能格差があった状況を解消し、ユーザーがどのデバイスからアクセスしても同等の高度な分析・共有機能が使えるようにする取り組みです。国土交通省のBIM/CIMロードマップでも、クラウドベースの設計・施工データ管理が推奨されており、このような統合的なプラットフォーム強化は市場トレンドと合致しています。
内容
2026年4月7日より、BIMx Web版でPro機能が利用可能になります。具体的には以下の2つの主要機能が追加されます。第一に、3D要素の表示/非表示の切り替え、およびレイヤー・レイヤーフォルダ・レイヤーコンビネーション機能による複数要素の表示制御です。これにより、ブラウザ上でモデル内の特定の階や系統(構造体、電気系統、給排水等)を柔軟に表示・非表示にできるようになります。第二に、カスタマイズ可能なカットプレーン機能で、任意の要素面に平行に3Dモデルをスライスし、垂直・斜め・水平の断面を簡単に生成できます。同時にArchicad 29.1およびMEP Designer 29.1アップデートの一環として、BIMxへのエクスポート処理も最適化され、ファイルサイズが縮小され、エクスポート速度が向上しています。さらにWeb版・デスクトップ版では、3Dモデルとレイアウトの読み込み速度が大幅に高速化されており、ユーザー体験の向上が実現されています。
技術的ポイント
このアップデートは、BIMxのプラットフォーム統一戦略の重要なマイルストーンです。これまでモバイル・デスクトップ版で実装されていたPro機能をWeb版に拡張することで、クライアント・サーバー環境での3D処理の複雑さに対応した実装が必要でした。特にカットプレーン機能は、ブラウザ上でのリアルタイム3D計算を要求するため、WebGL等のブラウザ3D技術の最適化が不可欠です。レイヤーコンビネーション機能はArchicad設計時のレイヤー構成を維持しながら、IFC等のBIMデータ形式でも互換性を保つ必要があります。BIMxエクスポートの最適化により、メッシュ圧縮やLOD(Level of Detail)制御などのレンダリング効率化技術が導入されていると考えられます。これらの技術進化は、大規模複合施設や超高層建築のようなモデルサイズが大きいプロジェクトでの実用性を大幅に高めます。
業界への影響
BIMxのWeb版機能強化は、BIM運用の民主化をさらに推し進めます。従来はArchicad本体や専用クライアントアプリケーションでしか実現できなかった高度な3D分析が、ブラウザ経由でどの利用者もアクセス可能になります。これは施主・発注者・現場管理者・協力業者など、設計者以外のステークホルダーがBIMデータを有効活用する環境を整備します。カットプレーンは特に、施工計画・現場管理での断面確認や干渉チェック、MEP系統の可視化に有用です。BIMcloud 2026.1の同時リリースにより、クラウドベースのプロジェクト管理がさらに統合され、設計から施工段階への情報連携がスムーズになることが期待されます。グローバル的には、Autodesk Fusion 360やTrimble Connectedなど、競合他社もWebベースのBIM共有・分析機能を強化しており、この分野での競争が激化しています。