背景

BIM推進が進む国内の設計現場では、モデルの分野別利用が増加しています。特に建築設計モデルから構造・MEP設計者へデータを受け渡す際、干渉チェックや空間確認のためにドアと窓といった開口部だけが必要なケースが多くあります。従来は不要な壁やスラブまで含めたIFCを出力し、受信側が手作業でフィルタリングするか、モデルから要素を削除するなど非効率な運用が常態化していました。こうした課題に対して、Graphisoftは汎用的で再利用可能な解決方法を提示しました。

内容

Archicadの標準機能を組み合わせて、ドアと窓のみのIFCを効率的に出力する方法が紹介されました。具体的には以下の4ステップで実現します。まず元のプロジェクトをコピーし、作業用ファイルを作成します。次に「オプション→要素属性→ビルディングマテリアル」から全マテリアルの「干渉検出に参加」フラグを一括でオフにします。これにより壁・スラブ・屋根などマテリアルに依存する構成要素が干渉検出対象外になります。続いてIFCトランスレータを複製し、「"干渉検出に参加"する形状のみを出力する」オプションを有効化した専用トランスレータを新規作成します。最後にこのトランスレータを使用してIFCファイルを出力します。ドアや窓はライブラリパーツとして実装されているため、この設定に影響されず引き続き出力される仕組みになっています。

技術的ポイント

この方法の技術的な巧妙さは、Archicadの干渉検出機構とIFCトランスレータの出力フィルタ機能を組み合わせている点です。ビルディングマテリアルの「干渉検出に参加」フラグは本来、衝突判定エンジンが対象とする要素を制御するための属性ですが、IFCトランスレータ側で同じフラグをフィルタ条件として利用することで、元のモデル構造を変更せずに選別出力を実現しています。ドアや窓がライブラリパーツとして独立した要素として扱われるため、マテリアルベースのフィルタリングに影響を受けません。この設計により、プロジェクト本体の構成やレイヤー設定に手を加える必要なく、作業用コピーの簡易な設定変更だけで複数の出力バージョンを生成できます。既存のIFC出力方式は一般に全要素をエクスポートするか、事前に要素を削除するかの二者択一でしたが、この方法は動的かつ非破壊的な出力制御を実現しています。

業界への影響

この機能はIFC分野別モデルの運用効率を大きく改善します。構造設計やMEP設計の受信側は、不要な建築要素の削除作業やモデル軽量化が不要になり、受け取ったIFCファイルをすぐに干渉チェックや空間検証に活用できます。発注者側も、同一プロジェクトから複数の目的別IFCを自動生成できるため、ファイル管理や各分野との調整効率が向上します。グローバルなBIM標準化の文脈では、IFCデータの部分出力は既に実践されていますが、設定の単純さと再現性の高さで広く採用される可能性があります。長期的には、プロジェクト段階や目的に応じた段階的なIFC出力戦略を構築する基盤となり、コンカレント・エンジニアリングの推進に寄与するでしょう。