背景
buildingSMART International(bSI)は、建設・インフラ産業におけるオープンスタンダード(特にIFC:Industry Foundation Class)の開発・運営を行う国際的な非営利組織です。IFCはBIM活用における情報交換の国際標準として2012年にISO認可を取得し、世界中の設計事務所やゼネコン、ソフトウェアベンダーがこれに準拠した製品・サービスを展開しています。buildingSMART Internationalは各国の支部(Chapter)を通じて、グローバルなコンセンサスベースの標準開発を推進してきました。今回の2026年度総会は、同組織の統治体制と戦略方向を決定する重要な会議です。
内容
2026年8月6日に閉会したbuildingSMART Internationalの国際評議会年次総会(AGM)では、以下の人事および議案が承認されました。新会長にEric Bugeja氏、副会長にWill Sharp氏が選出されました。新たに取締役に選出された5名の関連取締役には、buildingSMART Japanを代表する矢島一実氏が含まれています。その他の選出者はオランダ(Gerard van der Veer)、ポルトガル(José Lino)、ブラジル(Rodrigo Broering Koerich)、米国(Will Sharp)の各支部代表です。また2025年度年次報告書の承認、会計監査人の再任、新たな指名委員会の発足などの標準的なガバナンス事項も可決されました。総会は6月18日に開始し、中断を経て7月29日と8月6日に再開されて完了しました。
技術的ポイント
buildingSMART Internationalの最大の技術的資産はIFC(Industry Foundation Class)標準です。IFCは、建築・インフラプロジェクトの計画・設計・調達・施工・運用フェーズを通じて、異なるBIMソフトウェア間での中立的な情報交換を可能にするデータスキーマです。2012年のISO認可以降、ISO 16739-1として国際的に位置づけられ、Autodesk Revit、Graphisoft Archicad、Trimble SketchUpなど主要なBIMオーサリングツールがIFC出力機能を搭載しています。新体制下では、既存のIFC標準の継続的な支援と採用促進が明示的な優先事項として掲げられており、これは市場での互換性維持と標準化の深化を意味します。同時にbSIはISO、欧州標準化委員会(CEN)、開放地理空間情報コンソーシアム(OGC)といった他の国際標準機構との連携も強化しており、IFC以外の新興分野(地理情報、インフラライフサイクル管理など)への標準拡張も進行中と考えられます。
業界への影響
Eric Bugeja新会長は、"Board(取締役会)とChapters(各国支部)をクリアで長期的な方向性のもとに一体化する"ことを優先課題に掲げています。これはbuildingSMART Internationalの組織統一性を強化し、グローバルなBIM標準化の推進力を増すシグナルです。グローバル建設業界では、欧州のBIM2030指令やシンガポール・オーストラリアなどアジア太平洋地域のBIM義務化の動きが加速しており、IFCはこれらの規制基盤となっています。新体制は、ISO/CENとの協業をさらに深める可能性が高く、建築情報モデルから土木・インフラへの標準拡張(Infrastructure Data Dictionary等)も加速するでしょう。また地域別の代表性(日本・ブラジル・ポルトガルなど多様な市場の取締役起用)は、グローバルな標準の地域適応性を高める意思表示と解釈できます。