背景

AI生成画像の精度が劇的に向上する一方、建築・デザイン業界が直面してきた課題がある。それは、AIが生成した魅力的なビジュアルを、実際に設計・製造可能な3Dモデルに変換することの難しさだ。従来のCADワークフローでは、スケッチやコンセプト画像から幾何学的な部品関係を人間が手作業で構築し、設計要件を反映させながら何度も修正を重ねる。このプロセスは早期段階の建築・インテリア・家具・プロダクトデザインで特に時間を要し、設計意図の維持と実装可能性の確認が常に問題になってきた。こうした背景から、Formas.AIはAI エージェントが直接 CAD 操作を担当し、複数の AI モデルを協調させながら幾何学的な整合性と設計要件を同時に管理する「Cartesian」を開発した。

内容

Cartesian は、写真・スケッチ・テキストの設計要件・既存モデルから出発し、デザイナーが会話を通じて個別のコンポーネントを精緻化していくプラットフォームである。中核には、AI エージェント専用に設計された独自の CAD カーネルと幾何学ツールキットが搭載されている。このシステムでは、複数の AI モデル(OpenAI の GPT-4o、Anthropic の Claude Opus 3.5 など)が相互に連携し、参照解釈・設計要件の発展・幾何学的なオーサリング・レビューを担当する専門エージェントが並行して動作する。モデルはコンポーネント・レイヤー・アセンブリとして組織され、部品間の関係性によって設計意図が保持される。環境解析(日光、影、リアルタイム風解析)を要求して結果をモデリング決定に反映させることも可能で、家具・製品・構造アセンブリに対しては、材料厚さ・寸法・間隔・組立関係を設計制約として探索できる。2026 年 10 月 31 日から段階的にデスクトップ版(macOS・Windows)がローンチされ、現在プレビューウェイトリストが公開中である。

技術的ポイント

Cartesian の革新性は、CAD カーネルレイヤーを AI エージェント向けに基盤から再構築した点にある。従来の設計ソフト(AutoCAD・Revit・Rhinoceros)は人間のマウス・キーボード操作を想定して開発されたが、Cartesian ではエージェントが自動的に利用可能なツールを発見し、ソリッドと自由曲面を構築し、幾何学をプログラム的に検査・修正できる。複数の AI モデルの並行処理結果は、共有モデル内の幾何学的チェックによってマージされるため、矛盾した変更が混入しない。既存ワークフローとの相互運用性も重視され、Rhinoceros・Blender への直接接続、AutoCAD の DXF、BIM ワークフロー用の IFC、プロトタイピング向けの STL、ソリッドモデル向けの STEP など多数の形式をサポートしている。これにより、既存の CAD 資産を破棄するのではなく、AI エージェントが既存モデルを読み込んで改善提案を生成し、デザイナーが検討・採用する運用が可能になる。

業界への影響

Cartesian は早期設計段階の時間短縮と創造性の拡張をもたらす可能性がある。従来、概念設計から実施設計への転換には、デザイナーが写真やスケッチをCADモデルに手動変換し、設計要件に基づいて個別部品を調整する段階が必須だった。この過程は数週間単位の期間を要し、修正が重なるにつれて設計意図の喪失や矛盾が蓄積しやすかった。Cartesian では AI エージェントが要件の解釈と幾何学構築を同時に進め、デザイナーは会話を通じて高度な判断に集中できる。建築ファームやデザインコンサルティング企業にとって、プロトタイピングのサイクルが加速し、複数案の並行検討も効率化される。また、環境解析機能の統合により、CFD やダイナリク解析を別ツールで実施して手動でモデルに反映させるのではなく、AI エージェントが自動的に検討結果をモデル改善に織り込む新しいワークフローが生まれる可能性がある。