背景
BIM業界では過去10年間、Autodesk Revitの圧倒的シェアに対して、Graphisoft Archicadが欧州や日本で徐々に存在感を高めてきた。しかし実務プロジェクトでは、クライアント指定やローカルルールにより複数のBIMソフトが混在し、データ形式の変換作業による遅延やエラーが常態化していた。Nemetschek Groupが近年進める「オープンコラボレーション戦略」は、この業界の分断を解決しようとする試みであり、今回のArchicad-Autodesk Forma連携はその具体的な成果である。業界データによれば建設プロジェクトの92%が大幅な遅延と予算超過を経験し、年間2.1兆ドルの損失が発生しているという背景が、この連携の緊急性を物語っている。
内容
Graphisoft(Nemetschek Group傘下)は2026年6月、米国AIA会議で「Archicad-Autodesk Forma Connection」を発表する。これはArchicadネイティブフォーマットでAutodesk Formaのデータ管理システムと双方向でデータを交換できるアドオン機能である。ユーザーはArchicad環境に留まったまま、設計モデル・ドキュメント・プロジェクト情報をFormaプラットフォームに安全に送受信可能になる。同時にNemetschek Groupレベルの「オープンコラボレーション基盤」を開発中であり、2026年早期のアーリーアクセス開始を予定している。この基盤はIFC・BCF・PDF・DWG・RVTなど業界標準フォーマットをサポートし、モデル・ドキュメント・課題・決定事項を複数チーム間で同期させるブラウザベースの環境となる。さらに10月にはAI統合設計プラットフォームのアーリーアクセスも予定しており、数百の質量・レイアウト・性能シナリオを秒単位で検討・最適化できる機能が組み込まれる。
技術的ポイント
この連携の革新性は、IFCやBCFといった中間フォーマットへの変換を経由せず、Archicad独自フォーマットとForma形式を直接交換する「ネイティブ連携」にある。これにより変換時の情報損失やメタデータの誤認を最小化できる。既存ソリューションでは、ユーザーはIFC→RVT→Formaといった複数段階の変換を強制されており、各ステップで設計情報の粒度が低下していた。オープンコラボレーション基盤がブラウザベースであることも重要で、高価なワークステーションやライセンス数を削減し、クラウドネイティブなスケーラビリティを実現する。BIM実務者にとって最大の利点は「自分の慣れたソフト(Archicad)にいながら、Forma環境で要求されるワークフロー条件を満たせる」という点であり、これまで強制されていた「ソフト変更の認知負荷」が消失する。
業界への影響
この動きはBIM市場の競争環境を根本的に変える。従来Autodesk Forma導入時は、プロジェクト全体がAutodesk Revitで統一されることが暗黙の前提だった。今後はArchicadユーザーもFormaプラットフォームに参加でき、実装アーキテクチャの選択肢が広がる。特に欧州や日本でArchicadシェアが高い地域では、Forma導入時の「ソフト乗り換えコスト」が劇的に低下するため、結果的にNemetschek/Graphicoftの競争力向上につながる。建設業界全体では、複数ソフトの共存が「当たり前」になり、相互運用性への投資と標準化の推進が加速する。IFC4.3やBCF2.1といった新規格への対応圧力も高まるだろう。